海外ランドスケープレポート
California State Polytechnic University
カリフォルニア州立工芸大学

大西陽子さんの留学レポート U
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アメリカに来て10ヶ月近くが経とうとしています。交換留学生の条件である三学期間の留学生活も終わり、今私は残りのこちらでの時間をランドスケープ事務所でインターシップをしつつ、ゆっくりと過ごしています。

さて、冬学期そして春学期は、三年生のデザイン、Intermediate Landscape Designを履修しました。
この授業では、チャールズ&レイ・イームズが制作した教育映画、'Powers of Ten'のアイディアをもとに、現在John T. LyleCenter for Regenerative StudiesのディレクターであるKyle D. Brown教授が当時、導入したデザインプロセスを4、5人のチームをでたどっていきます。

映画の中では、10秒毎に10メートルの速度で人の細胞から宇宙までカメラが旅をする映像が流れるのですが、授業では簡単にいえば、大きなスケールから最終的にはフットスケールまで順に再構成、設計、をしていきます。

春学期の私が取り組んだ課題を例にとっていいますと、まず、ロサンゼルスカウンティ全体を視野に入れて、それぞれ今おかれている状況を洗いざらい調べます。そして次に人口、人種、地形、地質、気温分布、気候分布、動植物生息地、などなど、あらゆる情報をもとに、分析をし、最終的にデザインへと持ち込みます。これがカウンティレベル、都市レベル、地域レベル、コミュニティレベル、サイトスケール、フットスケールと繰り返されていく訳です。

特にこの学期では、学校がテーマとして挙げられ、最終的には学校をデザインしました。あらゆる観点からその都市、地域を把握し、最終的にデザインするものがどう必要とされているか、どう影響していくかということを言葉にしながらのデザイン作業です。

そうしていくことで自然とデザインにもその都市の環境が反映されていきます。しかし、とてもではないですが、10週間ですべて完璧にやりきれるものではありません。今の三年生のプログラムでは、秋から春まで、繰り返しそのプロセスを学ぶことで、そのプロセスは徐々に身に付いていきます。

またグループで課題をすることで様々な視点から課題に取り組むことができるのも魅力の一つです。現在カリポリでは、同じ三年生のデザインの授業を大学院の一年生も履修しているので、さらに視点は広がります。院生の皆さんは、ほとんどの場合一度社会に出て大学戻ってきた人が多く、また専門分野も様々です。そんな人々が同じランドスケープという分野に取り組む環境はデザイン領域とその可能性をグンと広げてくれるような気がします。私にとってはこの点が一番の魅力でした。

ただ、ランドスケープ専攻の生徒が増えるにつれて、先生方も新たな教育プログラムを検討しているようです。今の三年生も、60人ほどになり、また大学院生も一緒に履修するので、90人くらいの大規模な授業になる訳です。今でも4つあるラボが、今後もっと増やされることになるかもしれません。

三年生のほかの授業には、主に Planting Design、Landscape Constructionがあります。

PlantingDesignでは、サイト、例えばオフィスのエントランスや住宅の庭などのサイトが与えられ、はじめにコンセプチュアルデザイン、そして植物の具体的な種類までデサイン授業です。LandscapeConstructionでは、その名の通り、外部における構造についての授業で、植物の植栽方法や排水設備の把握・設計、舗装のテクスチャ・素材の把握から、地形デザイン、照明デザインまで、幅広い知識を学びます。カリポリの構造の授業はとても面白く、レクチャーとラポとどちらでも課題が出され、同じ学年の友達は多くのモデル作りに追われていました。ただその内容はかなり興味深いです。

さて、ここまで三年生の授業について書いてきました。カリポリではこのほかにも二、三年生で、毎学期フィールドトリップがあり、サンフランシスコや、サンタバーバラ、サンディエゴなどを巡ります。公園やプラザなどを皆で歩いてまわり、簡単な課題をグループでこなします。もちろんそれぞれの都市にクラスの友達と二、三日、長いときは一週間滞在するので、とてもいい思い出になりました。

また、カリポリの教授陣には日系の先生も多く、皆とても親切に授業をしてくださいます。カリポリのシンボルとなっているCLA棟のわきには、日本庭園が二年前に完成され、今話題を呼んでいます。http://www.csupomona.edu/~panorama/fall_03/taste2.html

実はこの庭園、日本人でカリポリの教授もなさっておられた上杉武夫先生によってデザインされています。上杉先生は、九州芸術工科大学とカリポリの交換留学制度を始めた方で、私も学期中は大変お世話になりました。先生の作品はサンディエゴのバルポアパーク、ロサンゼルスのJACCCなどでも見ることができます。まだまだ現役で、私がインターンで通っている事務所の人ともプロジェクトを一緒になさっているそうです。

私自身、今交換留学のプログラムを終えて、今は、学期中の作品を自分なりにまとめているところです。アメリカ滞在もあと二ヶ月。ここで学んだことをどう活かしていくか、今後の設計活動も据えて、自分の目標に挑戦し続けたいと思います。また授業に関すること、わからない点がありましたら、質問してください。日本のランドスケープを勉強しようとする人々の役に少しでも立ったらと思います。


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