ランドスケープ Q&A

1)ランドスケープの定義

〜ランドスケープの名称〜
ランドスケープは、「風景」を原語とした英語の「Landscape」からきています。そして「建設者」という意味の「Architects」(アーキテクツ)がついて「Landscape Architects」(ランドスケープアーキテクツ)という職業を表します。直訳では「風景」を「創造」するという意味になり、より総合的な観点から景観や環境に取り組むようになりました。


〜ランドスケープの対象範囲〜
ランドスケープが扱う対象範囲を限定するのは難しいのですが、個人宅の庭(ガーデン)から、公園、街路、植物園、アトリウム、河川、都市、自然環境など、屋内外の空間が主な範囲だといえます。そして、その空間修景や機能を形成するための、調査・企画・計画・設計・施工・管理などの分野があり、現状ではそれぞれの分野で分業がなされていることが多いと思います。


〜ランドスケープの生まれた背景〜
ランドスケープは、日本では一般に「造園」という言葉で親しまれています。しかし、多くの方は「造園」といえば、植木屋や庭師等しか思いつかないようです。
 しかし今日では造園の役割や取り扱う空間の範囲が拡大し、「造園」の一般的な概念を大きく超えて活躍をしています。そこで「造園」という概念では括(くく)りきれないため「ランドスケープ」という言葉が浸透し始めました。

〜ランドスケープの定義〜
造園並びにランドスケープの定義はいままで多くの人に定義づけられています。ここでは正確な表現と伝達を図るために「改訂版造園施工監理技術編」から抜粋して掲載させて頂きます。

造園の定義:

 「造園」という言葉の定義として、1917年田村剛は、"造園術とは、土地を美しく取リ扱う術であり、または自然を享楽せしめる施設とはいえ、同時に他の実用・縦済・衛生・保安・教化等の目的を伴ってもあえてさしつかえない"としています。

また、1924年上原敬二は、"造園学とは、人間生活の上に使用、享楽のため種々の程度において美観と同時に利用の目的を達するよう土地を意匠設計する理論を考究する学術である"としています。

さらに、1949年永見健一は、"造園とは一定の土地の上において、その地貌とその上にあるものおよび他から持ち込んだ植物その他色々の材料を組み合わせて、これから創造された、または修飾加工して造成せられた一つのまとまった構成であって、それらを一次的目的として人の慰楽・休養・保健・鑑賞等の場たることを期し、第二次的目的として、保安・知育等の助長を図ることを原則とするが、政策的にはこれから経済収益を挙げることを目的とすることを防げない"としています。


ランドスケープ(Landscape Architecture)の定義:


1873年アメリカ合衆国のクリーブランド(H.W.S.Cleveland,1814〜1900)は、"Landscape Architecture"(造園)を定義して、"ランドスケープアーキテクチャは文明進歩の各種の要求に対して、最も便利に、最も経済的に、そして最も優美にするように土地を編成する技術である"としています。

また、アメリカ造園科家協会(ASLA:American Society of Landscape Architects)の定義によると"ランドスケープアーキテクチャとは、美学的並びに科学的な理論を活用して、人間の物的環境を改善することである"としています。

この他、ハーバード大学造園学科による定義は"ランドスケープアーキテクチャは技術であり科学である"ととらえられており、それは、"空間と客体とを伴いながら、安全で効果的で保健的で快適な人間の利用のための土地を編成することである"となっています。



学者さんの言葉ですので、少々小難しく書かれていますが、一般に考えられていた「造園」の概念とはかけ離れていることがおわかりでしょうか。

もちろんあくまで定義であって現状の業界とかけ離れていることも多いと思います。しかし、こうした定義の中の「土地を美しく取リ扱う術」や、「最も便利に、最も経済的に、そして最も優美にするように土地を編成する技術」、「人間の物的環境を改善」、「安全で効果的で保健的で快適な人間の利用のための土地」は本来の造園であり、ランドスケープの姿ですから、多くの関係者が今一度この意味を考えるべきかもしれません。

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