ランドスケープってなに?

7)これからのランドスケープ

現在社会は多くの問題点を抱えていますが、世界中のランドスケープアーキテクトとランドスケープもその解決のために日々進歩していきます。ここでは、現在ランドスケープアーキテクツが取り組んでいる活動をいくつか紹介します。


「ランドスケープ・マネージメント」
ランドスケープの創出する空間は、時とともに移ろい、維持管理され、運用されていきます。ランドスケープにおいてのマネージメントとは、景観や自然環境、公園緑地といったさまざま創出空間を効率的に維持管理し、よりよく運用・活用を図り、かつ責任をもつことです。
人と自然との両面をコーディネートし、市民と協働を図り、恒久的に魅力を維持しつつ、その価値を最大限に生かした運用を図っていくことが求められています。

「ランドスケープ・コード」
 シンガポールでは、1957年の「ガーデンシティ構想」をうけ、緑化の空間が創出される仕組みを基準化した「ランドスケープコード」が作成されています。
 たとえば、商業地区等では、敷地の約30%の面積を公共空間として活用できるランドスケープで覆うことや、デベロッパーが、行政に全体計画を示し、建築費全体の10%を補償金として行政に預け、計画どおりで無かった場合は、行政が指導して改善させること、駐車場は、外部から見えなくなるように緑地帯を設けるか、高木を植栽すること等が規定されています。
こうした必要なランドスケープコードを創出していくことも求められています。

「パークマスター・プレリーダー」
公園緑地を舞台に、人間と自然とが結びつく豊かで文化的なパークライフをコーディネートします。その結果、公園緑地の付加価値を高め、自立した公園運営が図られていきます。これまで不可能に思えた公園の活用も、パークマスターによって多様なアイデアがうまれることと思います。
また、こどもの遊びに特化して、安心して自由な遊びを見守るプレリーダーが、プレイパークなどで活躍しています。

「コラボレーション・ランドスケープ」
外部空間を取り扱うランドスケープの領域はもともと様々な職種とコラボレーションがしやすい職種といえます。それは建築や芸術家だけの物質的コラボレーションだけでなく、よりよいランドスケープの発展と可能性の探索のために、思想家・人文学者・エコロジスト・教育者など社会を形成する多様な人たちと開かれたコラボレーションが可能であり今後も大きな可能性をもっています。

「ご近所ランドスケープアーキテクト」
地域の身近な景観や環境のランドスケープデザインについて相談役になれるランドスケープアーキテクトが望まれています。かつて江戸・明治では植木屋とよばれる人たちが、身近な庭から都市の骨格となる森林形成に関わりました。今では各都道府県にも「景観アドバイザー制度」などが整備されています。

「グリーンネットワーク・エメラルドネックレス」
 それぞれの孤立した緑の拠点を、緑道や緩衝緑地、公園等でネットワークし、連続したグリーンを都市空間につくり出そうとしています。
「エメラルドネックレス」とは、ランドスケープアーキテクトのフランクリン・ロー・オルムステッドが構築した、個々の公園をパークウェイで結びつけるパークシステムです。こうした緑の骨格を形成するためには、もっとランドスケープアーキテクツが早い段階(都市計画)で参加しても良いと思います。

「園芸療法・福祉・公衆衛生とランドスケープ」
愛・地球博開催中、地域の高齢者が病院に行かずボランティアに参加して老人医療費が低減したという話があります。人々が健康に活動できる生活環境やオープンスペースを形成しながら、予防医療や公衆衛生に貢献し、積極的にランドスケープアーキテクトも高齢者社会へ対応していかなければなりません。

「ルーラルランドスケープの発展」
現在、食料自給率や農業の諸問題が大きな課題となっている中で、農村環境に関わるランドスケープが求められています。農村景観を整えるだけでなく、里山の放棄や、農業とのふれあい、地産地消、地域資源作物や食に関わるランドスケープも大きな領域になります。

「地域活性化とランドスケープ」
景観は、地域活性化の要素として認知されるようになりました。ランドスケープアーキテクトは、こうした景観だけでなく、地域の取り組みや空間の魅力形成をハード・ソフト面から関わり合いながら、人が集まる魅了ある街づくりに貢献することができます。

「エデュケーション・ランドスケープ」
自然と人との折り合いをつけながら、理想の空間を形成するランドスケープは、環境教育教材としてもすばらしい素材といえます。実際に公園づくり授業や環境ワークショップにも登場します。また、子供たちの育成にふさわしい遊び場を提供することによって、子供たちの未来にも関わっていくことができます。

「歴史・文化とランドスケープ」
歴史的な景観や伝統的な造園技術を形成することによって、ランドスケープアーキテクトは歴史と文化を現代に継承しています。地域の潜在資源を掘り起こし、ランドスケープデザインに展開する手法は、過去と未来をつなぐ技術であるといえます。

「住民参画・市民協働」
 また、地域との結びつきを強くする公園づくりも行われています。地域の特性や歴史を充分検討し、デザインや植物の選定に役立てて行くほか、「住民参画」といって、公園の機能やデザインを住民の話し合いの中で検討し反映させたり、住民自ら公園づくりを行ったり、公園等の管理を地域活動の中で行おうとしていくものです。各自治体で行われることもあるので、ぜひ参加して下さい。

「ビオトープ」
 自然との共生の問題では都市環境等に生態系が循環する環境を持ち込み、生物のすむ環境を創造する「ビオトープ」が注目を浴びています。ビルの屋上にビオトープを持ち込んで、都市の緑を回復する試みも行われています。比較的簡単に参加でき自治体での活動も行われ始めました。もちろん、今ある自然環境の保護・管理も忘れてはならない重要な課題です。

「エコシティ」
 環境共生都市<エコシティ>は内外で盛んに研究され、都市空間の中で自然地形(河川・宅地造成等)や森を保全・復元し、動物たちの生息環境を守ることにより生態系への影響を最小限に抑えることが考えられています。
 また、対象空間の違いはありますが「エコパーク」「エコポート」「エコロード」というものがあり、いずれも生態系に配慮した共生空間の実現を目指していますが、いずれもどこまでの範囲で生態系への配慮と破壊を行うのか、注意して見守る必要がありそうです。

「バリアフリー・ユニバーサルデザイン」
 「バリアフリー」とは身障者にとって障害になる構造物を除去したり、段差がある場合にはスロープを設けたりと身障者に配慮したデザインです。また、「ユニバーサルデザイン」とは身障者も健常者も分けへだてなく利用できるように配慮され、バリアフリーより進化した総合的デザインです。 都市全体が一刻も早くユニバーサルデザイン化するように努力と協力をしなければなりません。


もっと美しく快適な環境へ、生物が多様に育めるまちづくりへ。後世に豊かな環境を残そう。

このような声がもっと大きくなるたびにランドスケープはこれからも進歩していくと思います。

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